「男の子向け」「女の子向け」に2分されてきた子供用品に、より柔軟なジェンダーの考え方を取り込む動きが米国で広がっている。子供用品売り場からは男女別表示がなくなり、より多様な色使いやモチーフを取り入れた子供服メーカーも登場した。大手玩具メーカーからも、性別の枠を超えた「ジェンダーニュートラル」をテーマにした人形も売り出された。

米玩具大手マテルは「ジェンダーニュートラル」をテーマにした「クリエータブルワールド」ブランドを投入した

米玩具大手マテルは「ジェンダーニュートラル」をテーマにした「クリエータブルワールド」ブランドを投入した

女の子ならピンクや花柄が当然?

他世代より性差別的な考え方に敏感だとされるミレニアル世代が子供を持ち始めた2010年ごろ。このころから、「性別についての固定観念を助長する」と子供用品の男女分けを疑問視する消費者の声が高まってきた。

大学で働くニューヨーク市内在住のハナ・チャップマンさん(38)は、1男1女の母親だ。約1年前に次女が生まれ、改めて性別と子供服にまつわる固定観念にショックを受けた。「娘にピンクや花柄以外の服を着せていたら、当然のように男の子扱いされた。(女の子だと分かるように)髪にリボンでもつけたら? と意見されたこともある」という。

チャップマンさん自身が好むのはごくシンプルなシャツやジーンズで「もともと女の子色の強い服に関心が薄い」。大人向けに比べて子供用品は「特に性別分けが極端だと感じる」と話す。

性別の区別は色分けにとどまらない。米国の0~10歳児を対象とする子供服売り場で目につくのは、男児用にはモンスター・恐竜やトラック、女児用ならユニコーンやハート模様といった画一的なデザインだ。

ステレオタイプを壊す子供服ブランド

あまりに根強い固定観念に疑問を抱く母親2人が13年に立ち上げたのが、ネット販売の女の子向け子供服ブランド「プリンセス・オーサム」だ。顧客のリクエストに応え、19年6月には男の子向けラインの「ボーイ・ワンダー」を加えた。

ネット販売の「プリンセス・オーサム/ボーイ・ワンダー」では、色やモチーフを広げた子供服を提供している (Photo by Katie Jett Walls Photography)

ネット販売の「プリンセス・オーサム/ボーイ・ワンダー」では、色やモチーフを広げた子供服を提供している (Photo by Katie Jett Walls Photography)

同社のサイトでは、子供に人気のモチーフ「動物」「宇宙・科学」「恐竜」「忍者」などテーマ別にアイテムを検索できる。ロケットや重機のイラストをあしらった女の子用ドレス、パステルカラーのユニコーンが飛び交う男の子用パジャマなど斬新だ。当初は手づくりで販売を始めたところ、人気が拡大。15年にはクラウドファンディングで資金を集め、本格的に起業した。

創業者の一人、レベッカ・メルスキーさんは、10歳以下の3人の子供を持つ母親だ。自社製品について「女の子の褒め言葉がどんなに『かわいい』かに限られる必要はないし、男の子だって『愛情が深く優しい』内面を表す服があっていい。ステレオタイプを壊すためにできたのがこのブランド」と話す。単純に男女共用のユニセックス服ではなく「(男女)それぞれが着やすい裁断で、色やモチーフを広げた服づくりが特徴」だ。

「男の子向け」「女の子向け」表示やめる

衣類と同様に「男女分け」が顕著だったおもちゃ売り場にも変化の兆しがある。きっかけとなったのは、オハイオ州の母親、アービー・ベチテルさんのツイート投稿だった。

15年6月、米小売り大手ターゲットの子供用品売り場で「ビルディング(建築)セット/女の子向けビルディングセット」の売り場表示を見たベチテルさんは、表示を撮影した写真に「こういうのはやめてほしい」とコメントを添えツイートした。すると「男の子は標準ユーザーで女の子は例外なのか」「不必要な性差別だ」など、ベチテルさんに賛同するリツイートが相次ぎ、投稿が拡散した。ターゲットが店頭での「男の子向け」「女の子向け」の表示をやめると表明する事態につながり、米ウォルト・ディズニーもこの動きに続いた。

米ディズニーは店頭で「男の子向け」「女の子向け」の表示をやめた(ニューヨーク市内)

米ディズニーは店頭で「男の子向け」「女の子向け」の表示をやめた(ニューヨーク市内)

カリフォルニア州にあるサンノゼ州立大学のエリザベス・スイート助教授は、1990年代以降に特定の性別に照準を定めた玩具のマーケティングが急速に進んだとする研究を発表した。「男らしい」スーパーヒーロー、「女らしい」プリンセスのキャラクターが人気を集め、青やピンクなどわかりやすい色分けでのマーケティングの浸透が、男女別の線引きを助長したという。

ミレニアル世代の7割、固定概念を否定

米国では若い世代ほど、従来型の男女の固定観念を否定する傾向が強い。米非営利団体ピュー・リサーチ・センターの調査によると、「従来は女の子向けとされてきたおもちゃや遊びに、男の子が参加するよう仕向けるのは良いことだ」と答えた米国人はミレニアル世代(2019年時点で20~38歳)が69%で、ベビーブーマー世代(同55~73歳)の59%より1割多い。

ニューヨーク市内のメディア企業で働くキャサリン・デイビスさん(38)は、16年に生まれた息子のベンジャミンくんが歩けるようになったころ、昔、自分のお気に入りだった赤ちゃん人形をプレゼントした。「話しかけたり、おむつをかえたり、よく面倒を見ている」と目を細める。

デイビスさんの家庭は共働きだ。ミレニアル世代には、家事の負担は夫と平等に分担するのが当然という考え方が強い。「男の子だってそのうちお父さんになる。子供の世話をして遊ぶのは有用なこと」とデイビスさんは考えている。

「女性らしさ」の象徴ともされる「バービー人形」で知られる米玩具大手のマテルも、新たな取り組みを始めた。19年9月に発売した「ジェンダーニュートラル」がテーマの商品ブランド「クリエータブルワールド」(各30ドル=約3300円)では、髪の毛の長さや服を自由に組み合わせることで、より多様なジェンダーを体現する人形を目指したという。米調査会社ホライズン・メディアが同年11月に実施した調査では、同商品を買いたいと回答した消費者は全体では5%程度だったが、35歳以下では10%だった。子供用品で広がる「ジェンダーニュートラル」の考え方が今後どのような影響をもたらすのか、興味深い。